07紫陽花ー2

「雨は色を宿してる
ってのはどう?」
「青い雨や黄色い雨や
赤い雨?
青い雨ならともかく
赤い雨なんか気持ち悪いやい!
全部混じると
真っ黒だ〜。」

合歓の花陰に
真っ黒なアゲハ蝶が
ゆらゆらと戯れていた。
あれは
七年前の夏
母の野辺送りの日。

そして、突然の雷。
やがて、静けさを取り戻した
空の中ほどに
大きな虹が架かった。

あれは水と光の契約。

「雨は全ての色を宿して無色透明。
水と光の契約で虹は7色に、紫陽花は紫陽花色に。」
「それぞれはそれぞれの契約の形に?あっはっはー」
「なによ?」
「どんな時にでも理屈を付けるなーって思ってね。
しょせん、君にはとんでもない話は作れない。」


笑いたければ笑え!この世が黒い雨などで濡れるなど
夜の寝物語にだって、考えたくもない。

ラジオはさらに、優しく切なく歌い続ける。
「アメリカにもこんな歌、あるんだね?」

「君、アメリカをバカにしてはいけないよ。
あの国は多重的で層が厚い。紫陽花と同じでいろんな色の集合体さ」
「アメリカも水と光の契約??」
「ちょっとばかり白を偏重する質とは聞いてはいるがね。」