森は日の高い時ですら、
様々の幻聴と幻視に惑わされる
ものです。まっ白に咲いた
桜の花と思い近寄ってみれば
仙人草の枯花であったり、
九十九折の角に人が立っていると
思うと反射鏡が空を映していたり。
これが、明かりも全くない夜だと
山はさらに得体のしれない様相を
目の前に展開します。
青い目を持ったモンスターが頭上から
覆いかぶりそうになったり、
白い光源体が
ふっと目の前を横切ったり
真っ直ぐに続いていると思った道が
実は谷底に続いていたり。
09−県民の森「秋」2
ヘッドライトの明かりに
目をキラキラさせて
道を横切る狸などは
却って、なにかほっとするぐらいのものです。
トリック オア トゥリート
そういえば、もうじきHalloween ですね。
さらに森に分け入ると
木の葉の茂りで日は遮断され
辺りは薄暗く、空気はますます
冷たさを増してきます。
頭上の葉の輝きに
太陽の位置を確かめながら
帰らなければならない時間を
胸に推量(はかり)ます。
一枚の上着も持たない軽装。
手にあるのは水一つ。
宵闇に道を失うことがあっては
命取りになります。
ためしに携帯電話を開いてみると
お〜、電波不通。
工事のモーター音が
まだ遠くに聞こえているうちに
谷を登ることに致しましょうか。
森の谷あいに
キャンプ場があります。
避雷針つきの東屋。
そこに、
備え付けのかまどと鉄板。
材料さえ持ち込めば
いつでも、バーベキュウーが出来るように
なっています。
足元にはコロコロと音を立てて
流れる水場。
野菜などが洗えそうです。
夏、この山に蝉の声が溢れていた頃
谷あいはキャンプをする
子供たちの元気な声で
湧きかえっていたに違いありません。