晩秋の散策ー2

山に分け入れば
山は優しい香りに
満ちています。
春の花の
甘い香りでもなく
夏の青い
草いきれでもない
枯葉と枯れ草が
醸し出す
優しい香り。


ただ、その中で
こぼれ松葉や
杉の葉は
枯れてもなお
爽やかな清々しさを
残しているのも
確かです。

こぼれ松葉に
火を放ったのは
佐藤春夫。
(海辺の恋)
火を放つ相手は
いなくとも
せめて
乙女がごとく
こぼれ松葉を
かき集めるぐらいは
許されましょう。

草むらに置忘れたるやうさぎの瞳(め)

(風うさぎ)