足許のナズナが地を這う風に揺れている。
大地にひざまづき、ナズナにカメラを向けようとすると
カメラのレンズがうそぶく。
うそ〜、あなたの撮りたいのは向こうの梅の花よね。
いいえ、私の撮りたいのはこの小さな白いナズナ。
またまた〜、あなたの撮りたいのは向こうの梅の花よね。
お願いだからナズナの花を見つめてよ。
だ〜って普通ホントは梅じゃない?
何度もピントを修正し、根負けしてシャッターを押す。
カメラはさんざん迷ったあげく、ナズナでもない梅でもない
いったい何処を見つめたというのだろう。
ため息混じりに立ち上がると、
頭の中でシャッターがパシャリと下りる。
目の前が一瞬真っ暗。
軽い貧血でぐらりと大地が一回転する。
ナズナの花