梅(2)

昔、梅の花咲く道で行き暮れた事があった。
日が延びたとはいえ春未だ浅く
日は早々に沈み、深々と寒さがつのった。
足は棒になり、お腹は空き草臥れ果てて
ただただ子の手を引き、夫の後に従っていた。

むずかる子を叱り励まし
ポツポツと灯り始める暖かな他人の家の灯火を羨んだ。
幾つ灯っても私たちの憩いの場所にはなり得ないあかりの所在。
宵闇に慰めのように梅の香だけが漂っていた。


家も車も無く、
あるのは、私たちの若さと二人の子供達だけ。

いま、華やぐ梅を見て思うこと。

人生は阿吽。