病室のながーい廊下の突き当たりが分娩室でね
夜でもそこだけは煌々と灯かりが点いているんだ。
赤ちゃんはあまり時を選ばずにこの世に生まれてくるから.。
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眠れない夜やあるいはトイレに呼ばれて
真夜中に病室を出ると
たいがい、真夜中の分娩室の前の椅子には
一人じーっと吾が子の生まれてくるのを待つ
若い父親の姿があるんだ。
ああ、これが人生の原点の風景だって思ったよ。
だって分娩室とは反対側の廊下の椅子に座って
眠れないまま町の明かりか何かを見ているとね
もうこの世に居ない筈の父と母が
両脇から支えていてくれるのがわかるんだ。
こんな年になってもね。
でも、多分死んでいく身よりは
狂いかけてきたこの世に生まれてくる方が
実はよっぽど怖かったりするのかも知れないよ。
しっかりとその腕に生まれてくる子を
受け止めてあげてね、お父さん。
病院にて 1