野菊を抱えるほど両腕に摘んで
車に積み込むと、車の中は菊の爽やかな香りに満ちる。
年を忘れ、性別を忘れ、ただただ清らな秋の風になる。
人はそんなには強くないから、仏にもなるが鬼にもなれる。
それが、一もとの野の花で救われるなら
こんな在り難いことはない。
念仏の変わりに陽水のCDを流し,車は秋の比企丘陵を
ひた走る。

野菊