節分

イヌフグリの花

地を揺るがすような風の音に目を上げると
向かいの家の洗濯物が風に舞っている。
時は5時。
ベランダの白い壁にも、桜木の幹にも、
歩道沿いのツツジの植え込みにも赤い残照が落ちている。
ああ、日が延びた。
風がどんなに肩をいからして脅かそうとも

確実に日が延びた。


空の中ほど、弓張の月が浮かんでいる。
やがて、美しい茜色の夕焼け。
月は西北の空に向かって流れていく。


今日は節分。
人は人ゆえに心に鬼を棲まわせるから

私は今宵、密かに買い置いた豆を
心の闇に向かって撒こう。

そして、福の優しい笑顔を側に置いて
年の数だけ豆を食べるのだ。

明日、この地の遠い何処かで
春が立つとか。