冬の小道


木の葉は全て散り尽くし
道を覆っていた茫々の草が枯れると
蜘蛛も蛇も深い眠りにつき
やっと、あなた様の散歩道となる。

かさこそかさこそ
かさこそかさこそ

踏みしだく枯葉の音。
笹薮を渡る風の音。
眠たげな山鳥の声。

やっと、あなた様の散歩道。

蔓が両側からゆく手を阻む。
通りゃんせ通りゃんせ。

ここは、どこの細道じゃ?
ここは冬だけの散歩道。

枯葉の中にどんぐり達の背比べ。

頭のとがっているのが偉いんだい!
いいや!おしりが丸いのが偉いんだい!

がやがやがやがや
がやがやがやがや

そこで一郎が言いました。
だめでめちゃくちゃなのが一番偉い。

たちまちどんぐり達はシーンとしてしまいましたとさ。


         宮沢賢治「どんぐりと山猫」より


側らにひとり大地に根を下ろし
殻を破って葉を広げようとしているどんぐりが居た。

私的に言わせてもらえば
あんたが一番!