農家の嫁だった母は、山一つ隔てた実家に
時折里帰りをした。
その日が来ると母は柳行李から
紅い花模様の着物を取り出し、私に着せた。
そして、その上に白いフリルのエプロン。
母は私に風呂敷の包みを括り付け 
それからやおら私を背負い日傘を差して、
当時まだバスの通っていなかった田舎道を
歩いて里帰りするのです。


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