吉田家の秋
そこには、恐らく
多くの人々が失ってしまった
故郷の原風景が残っている。
上座には父親が座り
左手にはお客様が座る。
家族のものは右手。
下座は客や家族を世話して
忙しく立ち働く
主婦の居場所。
いろりを囲んで
さまざまな話が紡がれる。
山の田んぼが心配だとか
どこぞの誰ベえさんが
狸に騙されたとか
どこぞの姉さんは、そろそろ
嫁に行く年頃ではなかろうかとか
囲炉裏の煙が
時折目に沁みます。
2階はかって紙すきに使っていた
そうです。
部屋の隅に柴を背負った狸が
置かれていました。
「吉田家」の猫 サラ 18歳 メス