嵐ふたつ 花の葛野を 越へてゆき
風うさぎ
今年は夏の後姿を見送った記憶がありません。
秋は突然、窓を飛ぶ蝶の影となって訪れました。
遅い梅雨があけたと思うと、
とびっきりの猛暑にみまわれた今年の夏。
あまりの暑さに、どこかになりを潜めていた蝶たちが
9月に入るや、朝夕の凌ぎ易さを感じて
飛び交いはじめた模様です。
いつの間にか、斜めに傾いだ太陽の光に
柚子の木を訪れる蝶たちの影が
時折、窓を掠めるように
ゆきつ戻りつしているのに気付いたのです。
台風が荒々しく夏を連れ去って行きました。
野山は引きちぎられた青い木の葉や、木の実や小枝で
埋め尽くされました。
そんな中で、ひとり何事もなかったかのように
つるを延ばし葉を広げ、野原いっぱい
甘い香りを漂わせる葛の花。
もっとも、山道のあちらこちらに紫の花弁が
散り敷いているところを見ると、葛たちも
一夜、必死で嵐と戦っていたのかも知れません。
秋の訪れ