あれは風の姿なのですよ、きっと。
風が万の桜の花びらを紡ぎつつ
空と大地に描く
白い流れの軌跡は

あれは風の色なのですよ、きっと。
チガヤの穂波を北に南にあるいは
西に東に
揺らしつつ煌めく銀の色は

あれは風の匂いなのですよ、きっと。
森深く分け入る小道に満ちて
小鳥たちを 花たちを
眠りに誘う 若葉の吐息は


風は髪を撫ぜ風は肌を射し
風はさやさやと鳴り 風はごうごうと轟く。


私の瞳が風で満ち、
私の耳が風を聴き
木綿のブラウスが風を孕んで膨れる時
私は風
風うさぎ 飛ぶ。

「風」