葵
つるべ井戸の傍らに咲いた、葵の花びらをおでことアゴに貼り付けて 少年は紺碧の夏空に向かって、コケコッコ―と鳴いて見せたのでした。 それで私も、同じように花びらをおでことアゴに貼り付けて、すっかり ニワトリになったつもりでコケコッコ―と高らかに鳴きました。 たけくらべならぬ、鳴きくらべと洒落たわけでは無かったのでしょうが。 半世紀も前の話。